コレステロール その2・コレステロール値は低ければ低いほど良い?

血中コレステロール量は加齢により変動し、通常は60歳代まで徐々に増大します。またコレステロールレベルの季節によって変動し、冬には平均よりも高くなります。
高コレステロール血症が循環器疾患(動脈硬化と関連する)を引き起こす危険因子で、血中コレステロール値の大小で寿命が影響を受けると考えられてきたため、米国で大規模な疫学調査 MRFIT (multi risk factor intervention) が実施されました。その結果は予想に反して、コレステロール値は高すぎても、低すぎても寿命を短縮するというものでした。
血中総コレステロール値が・・・
・200 mg/dL以上:冠動脈疾患による死亡率が急速に増大
・180 mg/dL以下:冠動脈疾患による死亡率は低減せずほぼ一定、それ以外の死亡率が増える
*冠動脈疾患:心臓をとりまく冠動脈の動脈硬化で起こる疾患
コレステロール値が高いほど心筋梗塞のリスクが高まり、
コレステロール値が低いほど脳卒中のリスクが高まり、
血中総コレステロールが180-200 mg/dLが最も死亡率が低下し、長寿である
ことが指摘されています。
この結果は、血中コレステロールの総量よりその種類(LDLとHDLや酸化型リポタンパク質の存在)などコレステロールの質が寿命と深く関わっていると考えられています。
「コレステロール低値で死亡率が上昇」
日本での疫学調査(1986年度から1989年度までの福井市での26,000人を対象に住民検診の結果を保健所長白崎昭一郎医師がまとめた)では、
男性:コレステロール値が低い人ほどガンなどで死亡した人が多かった
女性:コレステロール値が低い群の死亡率が高かった
感染症、がん、肝疾患、気管支炎、胃潰瘍および貧血の基礎疾患をもった人は血清総コレステロール値が低くなるので、死亡率が高くなるためと考えられています。低コレステロールは、脳卒中のリスク要因でもあります。


「低コレステロールが冠動脈疾患や動脈硬化を改善するかどうかは明確になっていない」
コレステロール値が高すぎたり、低すぎたりすることを「脂質異常症」といい以下の4つが挙げられます。
1、 高コレステロール血症
2、 高LDLコレステロール血症
3、 低HDLコレステロール血症
4、 高トリグリセリド血症(トリグリセリドは中性脂肪のこと)
動脈硬化症や生活習慣病の他、膵炎へ移行しないよう注意が必要で、高すぎても低すぎても寿命は短くなることがわかっています。
先天的なものと、後天的な脂質代謝異常があり、「糖・脂質の複合的な代謝異常」という意味でメタボリックシンドロームが注目を集めています。
もう少し詳しく説明します。
・ 高コレステロール血症=高脂血症
血液中を循環する量が過剰となり、血中での正常値を上回るコレステロール値を示す症状ことです。
1)食事による外因性コレステロールの増大
2)末梢組織での LDLコレステロール受容体機能の抑制(末梢でのコレステロール取り込みが減ること)
・ 低コレステロール血症=低脂血症
血中での正常値を下回るコレステロール値を示す症状のことです。この病態の研究は比較的限られたものですが、うつ病、がん、神経ホルモンと関連が示唆されています。
・ LDLコレステロール異常低値
家族性低コレステロール血症、低βリポ蛋白血症、無βリポ蛋白血症、甲状腺機能亢進症、慢性肝炎、肝硬変、腎疾患、アジソン病、肝実質細胞障害、消化吸収不良症候群などが疑われます。
結論:コレステロールは生命を維持するのに不可欠の物質ですが、血液中を循環する量が過剰となることで高脂血症を引き起こし、血管障害(特に動脈硬化症)を中心とする生活習慣病の因子となることが知られてきました。現在は動脈硬化の危険因子(リスクファクター)の1つということになっています(他の危険因子は、高血圧、喫煙、糖尿病、肥満症、運動不足)。一方、低コレステロールは他の疾患による死亡率上昇が示唆されているため、低ければ低いほど健康であるということではなく、適量であることが大切だと考えられます。

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