コレステロール その5・コレステロールと食事

コレステロールと食事の意外な関係と、コレステロール値が気になる方にお薦めの食事について、ご紹介します。
①コレステロールは脂質の1種で、分量はこんな感じです
・体内の全コレステロール量はおよそ100-150g(脳、脊髄、脂肪組織に多く存在)
・LDL、HDLとして血流を介し全身に運搬されるのは10−13g(コレステロールの貯蔵庫)
・身体が1日に必要とするコレステロール量は1−2g
・アセチルCoAを原料として合成(大半は肝臓で0,8g、その他皮膚、いくつかの細胞や組織で)
食事からの摂取は0,2-0,3g→影響は、そんなに大きくない!
コレステロールを多く含む食事の摂取が増えても、生体には恒常性を保つ調節機構があり、健康な人間であれば体内におけるコレステロール量は一定に保たれます。食事からコレステロールを取らなかったとしても、脂肪や炭水化物を摂取すれば体内でコレステロールに転換されます。
②食事中コレステロールと疾患リスク
「心疾患リスクが上昇する」とする見解と「リスクは変わらない」と相反する見解があります。
1)心疾患リスクが上昇するとする見解: 1日に卵を1個摂取している場合、週に1個未満の者と比較して、糖尿病のリスクが2倍以上であるとしています。この見解などを根拠としてアメリカ合衆国などでは、食事性コレステロールを1日300 mg未満に抑えるよう推奨しています。
2)上昇しないとする見解:年齢18歳以上で、BMIが25 kg/m²以上の前糖尿病状態および2型糖尿病患者140人を対象とした調査で、朝食時に2個 × 6日 = 12個の卵を食べる高卵食群(72人)と、週に卵を2個未満の低卵食群(68人)に振り分け、3カ月続けました。(中略)調査により、卵の摂取量が多くても、2型糖尿病患者の脂質プロファイルには悪影響を及ぼさないとしています。(オーストラリアシドニー大学Nicholas Fuller、第50回欧州糖尿病学会)
③コレステロールと切っても切れない「油脂」には大きく分けて2種類あります
1)飽和脂肪酸:肉類やバター等の動物性油脂とココナッツオイル等の一部の植物性油脂の主成分。
2)不飽和脂肪酸:あまに油やオリーブオイル等主に植物性油脂の主成分。不飽和脂肪酸はオメガ3、オメガ6、オメガ9(n-3、n-6、n-9とも)に分類され、特にオメガ3(n-3)が身体に必要と言う事が分かっています。
オメガ3は以下の3つです。
1)αリノレン酸:あまに油、エゴマ油、しそ油など(体内で合成されないので食事からとらなければならない。体内でEPAやDHAに変わる。)
2)EPA(エイコサペンタエン酸):はまち、きんき、いわし、さば、鰻(蒲焼き)など
3)DHA(ドコサヘキサエン酸):鰻(蒲焼き)、本マグロ(トロ)、ぶり、さば、さんまなど
従来リノール酸(n-6の一つ)はコレステロールを下げる働きがあるとされていましたが、長期的にはTC(総コレステロール)値に変化がないとの結果が出ています。
最も避けたい油脂はトランス脂肪酸です。植物油を固形状に加工する際に発生する人工のもの(天然のものより悪いとされる)は、マーガリンやパン、洋菓子、加工食品等に多く使われています。アメリカでは、心疾患や癌を誘発する可能性が高いとして使用禁止となっています。ヨーロッパでは規制が設けられ、中国や韓国では表記義務がありますが、日本では特別な措置が有りませんので注意が必要です。
④アミノ酸の一種「N-アセチル-L-システイン」の摂取は、LDLの酸化を防ぐ
肝機能が向上し、結果的に血管内の垢(高血圧、心筋梗塞など様々な症状の原因とされる)の発生を防止し、血管の炎症なども抑えられ、様々な症状の軽減、または完治が証明されています。
また、心臓、循環器関連の病気の予知に現在最も重要視され始めてきている「血中リポプロテインa 」の量を下げます。リポプロテインaは近年の循環器病の予知にてコレステロールよりも正確な指標と考えられています。
N-アセチル-L-システイン(別称: アセチルシステインまたはNAC):システインの誘導体。システインは含硫アミノ酸の一種で、肝臓で合成され、タウリンを生成し、胆汁酸の成分となります。食物では、赤唐辛子、ニンニク、タマネギ、ブロッコリー、芽キャベツ、オート麦、小麦胚芽に含まれます。体内ではメチオニンから作られます。(メチオニンを多く含む魚介類は、しらす干し、鰹節、干湯葉、干海苔など。)
コレステロール値が気になる方へ、目的別にどの栄養、食材を摂取すると良いかご紹介します。


・ 動脈硬化予防
①動脈の弾力を保つ
→ビタミンB6:イワシ、鰹、まぐろ、さんま、大豆、バナナ、豚肉など
②抗血栓作用
→アリシン:ニンニク
③血管壁にこびりついたコレステロールを溶かし排出
→レシチン:卵黄、大豆、精白米、ピーナッツ、酵母など
④血液をさらさらにする(LDLを減らす)
→αリノレン酸:あまに油、エゴマ油、しそ油、チアシード(体内で合成されないので食事からとらなければならない。体内でEPAやDHAに変わる。)
→EPA(エイコサペンタエン酸):はまち、きんき、いわし、さば、鰻(蒲焼き)など
 ①刺身 ②煮る、焼く(20%減) ③揚げる(5〜60%減)の順で多い
→DHA(ドコサヘキサエン酸):鰻(蒲焼き)、本マグロ(トロ)、ぶり、さば、さんまなど(*缶詰は旬の時期にとれたものなのでEPA,DHAが豊富、カルシウムも一緒にとれる)
→ナットウキナーゼ:納豆
・ 血圧正常化、総コレステロールを減らしHDLを増やす
→タウリン:さざえ、ことぶし、帆立、蛤、たこ、えび、いか(特にするめの表面の白い粉)、サバやイワシ(特に血合い)など
・ コレステロールを胆汁酸として排泄、高血圧に
→アルギン酸:ひじき、海苔などの海草類
→ペクチン:リンゴや柑橘類の皮
→リグナン:ごま(煎って擦ると消化が良くなる)
→ムチン:山芋、おくら、モロヘイヤ、ツルムラサキ、里芋、なめこなど
→フコイダン:こんぶ、もずくなど
→マンナン:こんにゃくなど
・ LDLの酸化を防ぐ
→βカロチン:モロヘイヤ、かぼちゃ、人参、春菊、明日葉など(吸収されるとビタミンAに変わる)
→ビタミンC:アセロラ、グアバ、赤ピーマン、菜の花、イチゴなど
→ビタミンE:アーモンド、にじます、ヘーゼルナッツ、鰻(蒲焼き)、かぼちゃなど
→ポリフェノール:赤ワイン、バナナ、マンゴー、ブルーベリー、春菊、チョコレート、緑茶、コーヒー、トマト、生姜、ごま、そばなど多数(カテキン、タンニン、アントシアニン、ルチン、ケルセチン、イソフラボン、サポニン、セサミノール、クロロゲン酸などがポリフェノールの仲間)
・ HDLを増やす
→適量のアルコール(お酒好きの方、お待たせしました!)
米国保健科学協議会(ACSH)によると、日本酒に換算して1日に1、2合程度のお酒を飲む人が、最も心臓血管疾患のリスクが低いという結果が出たといいます。また、病気だけではなく事故や事件を含めた全死亡率と1日の飲酒量をグラフにすると、J型のカーブになる。つまり、適量の飲酒であれば、まったく飲まない人よりも長生きする可能性が高いというのです。J型のカーブということは、飲酒量が適量を超えれば、途端に死亡率が高くなるということでもあります。
HDLコレステロールを増やす適量は以下の通りです。
適切な飲酒量
ビール・・・・・・・・・・・・・・・中ビン1本(500ml)
日本酒・・・・・・・・・・・・・・・1合(180ml)
焼酎・・・・・・・・・・・・・・・・0.6合(110ml)
ウイスキー・・・・・・・・・・・・・ダブル1杯(60ml)
ワイン・・・・・・・・・・・・・・・1/4本(180ml)
以上のように、SHANTIでは「コレステロールの摂取を抑える食事」よりも、「コレステロール値を改善する(または動脈硬化予防)為に良い栄養素を摂取する食事」をお薦めしています。

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