人間の骨って、206もあるんです。
しかも人によって数が違います。
そして3年ですべての骨が生まれ変わる。。。
そんなお話を、大阪大学中之島キャンバスで伺って参りました。
http://21c-kaitokudo.osaka-u.ac.jp/events/2012/5243/image/image_view_fullscreen
④中野貴由先生のお話から、私が興味深かった点について書かせて頂きますね☆
骨の役割は
①荷重保持 Support
②内蔵保護 Protection
③運動の為の補助 Assisting in Movement
④ミネラルの貯蔵庫、平衡維持 Mineral Homeostasis
⑤血球産生 Production of Blood Cells
⑥骨髄産生 Triglyceride Storage
です。
骨を構成しているのは
50%が「アパタイト」骨の強度保持
50%が「コラーゲン」骨をしなやかに、最初に出来上がる’テンプレート’のようなもの
だそうで、全く無駄のない作りだそうです。
その骨が役割を果たせなくなった時に使う「インプラント」(歯だけじゃないんですよ)。
その寿命は15年といわれていて、だから若い人には使わないそうです。
インプラントは金属で作られ骨に埋め込まれますが、それ自体が骨の代わりをする事により、骨が骨の役割(上述の6つ)を果たさなくなってしまうという問題が起きているそうです。
そして骨自体が退化して、インプラントの寿命がきても再度インプラント出来る状態じゃなくなってしまっている事も。
そこで、まず何とかしなければ!というのが、インプラント後の骨そのものの強度をいかに保持するかということで、「骨の強度」のお話が出てきました。
「骨の強度」=「骨密度」
という考え方。
今も主流だと思いますが、実はそれだけではないそうです。
「骨の強度」=「骨密度」+「骨質」
だそうです。
「骨質」というのは、アパタイトとコラーゲンの配向性のことだと先生方は考えられているそうです。
「配向性」どちらの向きに対して強度が強いかということのようです。(応力の方向に促進される。)
その配向性が、骨の強度の70%を決定しているそうで、骨の種類(体内での位置関係)により、負荷がかかっている方向に対して強度が強く、それ以外の方向にはそれほどのつよさがない事を図示して頂きました。
例えば足の骨なら、縦の負荷が強いので縦に強いということで、これは骨密度だけでははかれない、つまり同じ骨でも向きによって強さ(折れやすさ)が違うというお話です(私の理解です)。
跆拳道や格闘技を通して、いろんな人の骨折を見てきましたが、納得です。
さらに面白いのは、骨の再生の順番でした。
骨密度の回復は、約12週でもとに戻りますが、配向性(強度)の回復は、そこからさらに12週かかるというデータがあるそうです。
骨折の完治を「骨密度」の測定により判断されていた為、再骨折が割と多かった(リハビリをしていた仲間を見てそう思いました)ということが証明されたんじゃないかと思いました。(レントゲンでみると、12週目も24週目も同じに見えるそうです。)
先生方は、「骨として振る舞う様な金属(インプラント)を作る」事を目指されていて、インプラント周囲の骨質維持とさらには、骨髄腔を作る事で骨の健全性(骨の役割⑤と⑥)を保とうとされているという、大変感動的なお話でした!
人間の事を本当に考えた素晴らしい研究で、ぜひまたその後のお話を伺いたいと思いました!
とても勉強になりました。ありがとうございました!
中野貴由先生
http://www.mat.eng.osaka-u.ac.jp/gcoe/jpn/members/memberlist/tea14.html
公開講演会にご参加いただきありがとうございました。
お話しした内容を的確に理解していただき嬉しく思います。
骨の構造は本当に複雑で、単純に骨密度だけでは語ることができません。健全な骨を保つために、骨量・骨密度の維持とともに骨質の維持が重要であると思います。
また、骨質も考えた生体デバイスの開発を目指していきたいと思います。
中野先生、早速のコメントありがとうございます!
とても嬉しいです!!!
大変勉強になりました。ありがとうございました。
今後の開発も、楽しみにしております。
中野先生より頂きました、私からの質問へのご回答です。中野先生、ご回答ありがとうございました。
備忘録として、またご興味のある方にご覧頂ける様、こちらにも書かせて頂きます。
質問1.人の骨は無駄がなく、合理的に出来ているようですが、配向性のお話の折に、頭蓋骨については、縦方向(薄い面)よりも横方向への強度が強いと図に示されていたように記憶しております。そうすると、頭蓋骨の目的としては、主に外からの圧力から脳を守るのかと思っていたのですが、もっと別のところにあるという事なのでしょうか?
ご回答:おっしゃる通りで外圧から守るようになっております。球を考えていただければわかるのですが、急に対する外圧に応答するためには、力は球面に沿った方向になります。したがって、骨面に沿って配向することはまさしく外圧を分散した方向である骨面に沿った方向に配列しています。
質問2.骨は60°の方向に再生しやすい、とのことでしたが、あれは確か大腿骨でしたでしょうか?応力が60°の方向にかかりやすい骨(部位)だからということですか?(聞き漏らしていた様でしたら、大変申し訳ありません。)
ご回答:その通りです。応力計算をすると、60°の方向が最大の応力方向になります。その方向に配向化してコラーゲン/アパタイトが形成されます。